このページでは、ラダーバックチェアについて
「結局それは何なのか」を、できるだけ混乱せずに確認できるよう整理する。
特定の作家や作品の名前ではなく、
構造を表す言葉として理解してもらえれば十分だ。
ラダーバックチェアとは
「ラダーバックチェア(Ladder-back chair)」を直訳すると、
はしご状の背もたれをもつ椅子、という意味になる。
構造はとても単純で、
- 背もたれの左右に2本の縦柱が立ち
- その間に、横に細長い部材が何本か渡される
この「横に渡された細長い部材」を スラット(slat) と呼ぶため、
スラットバックチェアと呼ばれることもある。
呼び方が違うだけで、
指している構造はほぼ同じと考えてよい。
用語の整理(最低限)
LADDER
はしご
SLAT
薄くて細長い板材
(ブラインドやシャッターの横板を思い浮かべると分かりやすい)
※航空機にも「スラット」は存在するが、
ここでは椅子の話なので忘れてよい。
BACK
背、背中、背もたれ
ラダーバックチェアの特徴(先に結論)
ラダーバックチェアの本質は、デザインよりも構造にある。
- 背もたれが軽く、通気性がよい
- 構造が単純で、修理や作り替えがしやすい
- 地域や時代によって形が大きく異なる
そのため、
「この形こそがラダーバックチェア」
という決定版は存在しない。
歴史的な代表例
シェーカー教徒のラダーバックチェア
ラダーバックチェアの代表例としてよく知られているのが、
18〜19世紀のアメリカで作られたシェーカー家具だ。
1770年代にイギリスからアメリカへ渡った
シェーカー教徒 たちは、
自給自足の生活の中で、実用性を重視した家具を作り始めた。
19世紀中頃には、
簡素で均整の取れたラダーバックチェアが
彼らの代表的な椅子のひとつとして定着していく。
装飾を排し、
使いやすく、壊れにくい。
この思想は、
ラダーバックチェアという構造と非常に相性が良かった。

ゴッホの描いた椅子
ラダーバックチェアは、
特定の宗派や地域だけのものではない。
1888年、南フランスで
フィンセント・ファン・ゴッホ が描いた
《ゴッホの椅子》にも、典型的なラダーバックチェアが登場する。

ただし、これはシェーカーの椅子とは
思想的にも文化的にも別物だ。
見た目は似ていても、
同じ系譜にあるとは限らない。

その他の例
ラダーバックチェアの原型は、
17世紀頃からヨーロッパ各地や
アメリカ初期の家具様式の中にも確認されている。
また20世紀初頭には、
スコットランド出身の建築家
チャールズ・レニー・マッキントッシュ が、
自身の建築作品「ヒルハウス」のために
背の非常に高いラダーバックチェアをデザインした。
黒塗りで極端に背の高いその椅子は、
実用品というより、
空間を構成する要素として強い印象を残している。

まとめ
ラダーバックチェアとは、
背もたれが梯子状に組まれた構造をもつ椅子
その総称である。
特定の国や人物、
特定のデザインを指す言葉ではない。
構造が単純であるがゆえに、
時代や地域ごとに姿を変えながら
長く使われ続けてきた椅子。
それが、
ラダーバックチェアだ。


