日本人が知っている木材の中でも知名度が高いと思われる「ラワン」。
普通合板にもよく使われていますが、この「ラワン」って実は特定の樹種を指しているのではないことを知っていますか?
今回はこのラワンについて掘り下げて見たいと思います。
ラワンと呼ばれる樹種
南洋材の代表的な樹種と思われがちな「ラワン」ですが、具体的には「ラワン科」という樹種は無く、フタバガキ科の内のいくつかの種の総称です。
ただでさえ紛らわしい木材の名称ですがこの「ラワン」のパターンもなかなか漠然として紛らわしいものですのでここで整理してみます。
まず、ラワン材として市場で扱われる条件は3つです。
- フタバガキ科であること
- 属名(亜属)がParashorea,Pentacme,Shoreaのいずれかであること
- 重硬ではない(比重が高くない)こと。
フタバガキ科 (学名:Dipterocarpaceae)
アフリカ、南アフリカにも分布するがアジアの熱帯地域を主に分布する双子葉植物の科で、常緑高木600種前後あり、3亜科17属ほどに分けられます。
フタバガキ属:Dipterocarpaceaeの意味は「羽の二枚ある実」、和名:「フタバガキ」は柿のような形をした果実に羽根突きの羽のようながくが2枚ついていることによるそうです。
ラワンの属名とグループ
日本にも輸入されている(されてきた)フタバガキ科の木材の内、主要な属は次の通りです。
フタバガキ科の主要な属名
属名 | 種類(別名) |
---|---|
Anisoptera | メルサワ(クラバック) |
Dipterocarpus | クルイン(アピトン) |
Dryobalanops | カプール(カポール、リュウノウジュ) |
Hopea | ホペア |
Parashorea | ホワイトセラヤ(バクチカン) |
Pentacme | ホワイトラワン(ライトレッド) |
Shorea |
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ラワン材として扱われるのはParashorea,Pentacme,Shorea属のいずれかなので上の表で見ると
- ホワイトセラヤ(約10種)
- ホワイトラワン(約3種)
- ホワイトメランチ(約30種)
- イエローメランチ(約40種)
- レッドメランチ(約75種)
- セランガンバツー(約45種)
となり、この中で比重が高くないものがラワン材として扱われることになります。
(特にセランガンバツ-は比重が高いので除かれる)
因みに産地によりや呼び名が違うので名前に「ラワン」とついているのはおおよそフィリピン産、「メランチ」はインドネシア及びマレーシア産、「セラヤ」はマレーシアのサバ州産です。
ラワンの色によるグループ分け
ラワンはさらに色によるグループに分けて扱われる場合があり、下の表のように分けることができます。
グループ |
ホワイトラワン |
イエローラワン |
レッドラワン |
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属名(亜属) |
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種類 |
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ここまで見てきたように一言に「ラワン」といってもたくさんの種類の総称なので具体的に何の樹種か、までは特定できないことが分かったかと思います。
例えば「マツ」と言っても同じマツ科の中には日本産の「クロマツ」や「アカマツ」、「ツガ」などにはじまり外国産では「ベイマツ」や「ベイトウヒ」「ロッジポールパイン」などの多くの種類がマツ科の中の種類であるのと同じですね。
日本とラワン材の関係
いずれにしても日本の木材工業にはラワン材を代表とした南洋材の存在に大きく助けられてきた歴史があり、なかでもこのフタバガキ科の存在価値は私達日本人にとっても重大なものです。
戦後の高度経済成長期の日本では、住宅をはじめとした建築物にはフタバガキ科の最大用途であるラワン合板がほとんど必須の建材でした。
そんなラワン類が国内でもっとも使われていた頃は輸入材の50%以上を占めていたようです。
ところが昨今ではラワンをはじめとした南洋材はずっと減少しています。
その理由は紛れもなく戦後の日本がフィリピンをはじめとした熱帯林を伐採しつくしたためです。
フィリピンではその当時国土の70%が森林だったそうですが22%程度まで落ち込んだと言います。(現在は少し上がっている)
日本の木材輸入相手国
令和元年の日本の木材自給率は37.8%だそうです。一応9年連続で上昇はしているようですがこの数字はまだまだ高くはないと思います。
日本の木材輸入相手国2019年の上位10国は次の通り
- カナダ
- ロシア
- フィンランド
- スウェーデン
- オーストリア
- チリ
- アメリカ合衆国
- ルーマニア
- ラトビア
- チェコ
となっています。
かつて伐採しまくり輸入していた熱帯地方の国は上位10国の中に一国もありませんでした。
木材は日本人にとっても世界の人々にとっても無くてはならない重要な資源ですが、一国の都合で節度を越えた輸入により、大切な資源を失わせるようなことは2度として欲しくないと思いました。