今回は無垢の家具づくりにおいて、国内で高級な家具ほどナラやウォールナット、タモなどの広葉樹が使われていますが、実際世界的にはどちらが家具に向いているのか?
針葉樹と広葉樹の特徴を踏まえてまとめてみます。
針葉樹と広葉樹
ご存じの方も多いと思いますがまずは基本的なことから確認します。
樹木は、落葉樹と常緑樹、といった分け方の他、針葉樹と広葉樹に分けることができます。
針葉樹 | 広葉樹 | |
落葉 | 生育に不適な季節に葉を落とし、葉が針のように細長い被子植物 | 生育に不適な季節に葉を落とし、葉が広く平らな被子植物 |
常緑 | 冬になっても葉を落とさず、葉が針のように細長い被子植物 | 冬になっても葉を落とさず、葉が広く平らな被子植物 |
針葉樹の定義は葉の形だけでは決められない
そもそも「針葉樹」や「広葉樹」といった定義は人為的なものですので木材として利用していく上で、この区別を用途ごとに定義しようとするのは無理があるかも知れませんが一般的には、下記のように区別されています。
針葉樹⇒葉が針のように細長い裸子植物(胚珠が剥き出しになっているもの)
広葉樹⇒葉が広く平らな被子植物(胚珠が心皮にくるまれているもの)
ただし、針葉樹の中には葉の形が針状ではないものも含まれるので厳密には裸子植物球果植物門の樹木がそれにあたり、一概に「針状の葉」だけでは区別できません。
そして針葉樹は歴史的に広葉樹よりも先に存在していたため、細胞レベルでは単純な構造(90~95%仮導管)なのに対し、広葉樹は細胞の構造(道管、仮導管、真正木繊維、柔細胞、放射組織、細胞間道など)が複雑です。
この事が製材して、木材としたときの見た目に大きく影響しています。
広葉樹で代表的なナラの板目
針葉樹で代表的なスギの板目
比べてみるとほぼ仮導管という組織で成り立っている針葉樹はその構造が単純なのが分かると思います。
早材と晩材
上の画像で色が淡く見える部分は早材(春から初夏につくられる)、濃く見える部分は晩材(夏から秋につくられる)といいます。
針葉樹の場合、春からの成長が旺盛だと、材として柔らかい早材の幅が広くなり、結果軽軟な木材となります。
一方、広葉樹の場合(とくに※環孔材)では早材はほとんど一定の幅でとどまり、あとは硬さのある晩材が育ちます。
このことから一般に、樹木は年輪幅が狭い方が強度がある、と思われがちですが、広葉樹では反対に年輪幅が広い方が強度が出る場合もあるので、何とも奥深いところです。
※環孔材:木材は道管の配列によって区分されるが、その中でも道管が年輪に沿って環状に配列されているのが「環孔材」。他に散孔材、放射状材などがある。
木材としての針葉樹と広葉樹
ではどちらが家具製作に向いているかという話ですが、結論から言えば広葉樹が圧倒的に向いていると思います。
もちろんどちらでも製材し、木材として使うことができますが、その理由を3つあげてみます。
1.広葉樹の方が重硬な木材が多い
まず一つは、細胞が複雑な広葉樹の方が、全体的に比重も高くなりがちで、重硬な木材が多いことです。
広葉樹⇒複雑な構造⇒重硬になりがち
(日本のスギ、ヒノキはまさにそのため植林されてきました)
2.針葉樹は早材と晩材の硬さの違いが大きい
早材と晩材、その硬さの違いが多きいのが針葉樹です。
早材はどうしても「目やせ」といって晩材部分より経年変化により凹んでしまいます。
そのため、数年も経てば表面が凸凹してくるのが特徴です。
早材部分を予め、削り取るように仕上げをしておく「浮造り」という方法もありますが、それだけそのような工夫を古くから必要とされてきた、という見方もできます。
それと直接使用者には関係ないことですが、加工する者にとっては穴開け1つにおいてもこの部分的な硬さの違いが、加工を困難にさせる原因にもなっています。
3.塗装映えするのは広葉樹
まとめ