家具用オイルの成分と乾燥時間を徹底比較|安全性・仕上がり・使い勝手がひと目でわかる

DIY

無垢材の家具には、オイル仕上げってやつがある。
気取って言えばオイルフィニッシュ、なんて呼び名もついている。

で、これをやる意味は大きく二つあって、ひとつは、いろんな油分を木の表面にあらかじめ染み込ませておくことで、ちょっと放っておくとまとわりついてくるチリとか埃とか、ああいう陰湿な連中から、なんとか一線を引くためである。

もうひとつは、逆だ。
普段はのっぺりと白々しく、あるいは灰褐色で、どうにも顔色の悪いおっさんみたいな木材たちが、たまには人の目を惹きたい、いやできればずっと注目しておくれ、と密かに願っている。
その願望を叶えるための、いわば“木のお化粧”を施す行為、というわけだ。

このオイル仕上げってやつが、二重にも三重にもえらいのは、
いわゆるペンキみたいに何度も塗り重ねる熟練の腕を要求してこない、という点だ。
どんな高尚なオイルでも、塗るのが難しかったら、こっちはやってられないのである。

で、ここまで聞くと、
「へぇ、じゃあちょっとそのオイルってやつを買ってきて、自前のテーブルトップでも塗ってみるか」
と人はわりと簡単に前のめりになる。
僕もなる。あなたもなるかもしれない。

けれどそこでひとつ問題が出てくる。
そう。どれを選べばいいんだよ、というあの問題だ。
僕らがこの消費社会で毎度のように額をぶつけている、あの選択地獄である。

で、多くの同輩がふと考える。「どうせなら匂いや身体への影響が少ないやつがいい」と。
まあ当然である。できれば森の精でも棲んでいそうな、とことん自然なやつがいい。

そこで僕は、ちょっと真面目に腰を上げて、
世に“自然塗料”と名乗っている家具用オイルの面々を呼び出し、
「お前ら、何でできてんの?」
という勢いで主成分と顔ぶれを並べてみたのである。

国産オイル 6選 ― “木の呼吸”を尊重するやさしい仕上がり

※基本的にクリア、透明色を基準に主観と時には偏見も含まれた独自レビューだからそこのところご容赦いただきたい。

1. キヌカ

米糠油100%。溶剤ゼロ。
ただただ、木に優しい。匂いもほとんどなく、扱いも楽。
「小さな子どもが触る家具だから、極力ナチュラルにしたい」という人にはこれ一択ともいえる。

仕上がり: しっとり明るめ、控えめの艶。

2. 匠の塗油(太田油脂)

えごま油100%。完全植物油。
乾燥が早く、発色も素直で、家具職人にもファンが多い。
“油の質”が良いので、時間が経つほどに木が落ち着いた顔になる。

仕上がり: 浸透性が高く柔らかい艶。

3. U-OIL

精選亜麻仁油と紅花油+天然顔料で色バリエーションが多い。
ただしこちらは 溶剤(イソパラフィン)入り
「本当の自然塗料」というよりは「扱いやすさ優先の自然系オイル」。

仕上がり: 色付きのバリエーションが強み。

4. いろは(アールジェイ)

国産ブランド。主に桐油、亜麻仁油、蜜蝋、ロジン(松脂樹脂)+イソパラフィン。
日本の伝統色が豊富で、和家具・和モダンの仕上げと相性がいい。
完全植物系ではないが、カラーものは色の美しさで定評だ。

仕上がり: 深みのある落ち着いた色味。

※木部用オイルに含まれるイソパラフィンは、適切に使用されれば人体への毒性は非常に低いと考えられています。化粧品や食品添加物、食品包装材にも使用される程度の安全性が確認されています。 by Gemini

5. バトン(BATON)

自然塗料系。成分は植物油を主原料とした天然植物性油脂、としか公表されていないが
こちらも 溶剤あり のタイプだが、ムラになりづらくDIYにも向く。

仕上がり: 透明の中にもややマットなものから艶ありまで選択肢がある。

6. ESHA(ターナー色彩)

亜麻仁油+テルペン樹脂(松脂) という珍しい国産オイル。
オイルなのにやや硬い仕上がりで、卓上やよく触る家具に有効か。
但しテルペン樹脂はやや匂いに癖あり。

仕上がり: オイル+テルペン樹脂の効果で比較的輪染みに強い硬めの質感。

🌍 海外オイル 6選 ― 機能と安心性のハイブリッド

7. Osmo(オスモ)TopOil

ひまわり油・大豆油・アザミ油+ワックス+白灯油。
とにかく丈夫。天板に強い。
厳密には植物油100%ではないが、耐水性・耐汚染性は最強クラス。

仕上がり: 上品なセミマット。天板向けの王様。

8. Livos(リボス)KUNOS

自然塗料の老舗。アマニオイルを主成分とし、天然樹脂、オレンジオイル、マイクロワックス、無鉛乾燥剤など、天然由来の成分を複数配合
“自然塗料界の王道”で、深みのある風合いが得られる。
家具職人のシェアが非常に高いらしい。

仕上がり: 濡れ色で木目が際立つ。

9. AURO(アウロ)家具用

全製品に全成分がはっきり公表されていてこだわりが強い。
クリアだけでも種類が豊富だが家具用で代表格が「AURO930天然オイルステイン」だ。(旧名Nr.130)
全成分:
▲オレンジ油▲ヒマワリ油▲亜麻仁油▲ヒマシ油▲鉱物顔料▲クレイ▲ポリオキシエチレンロジンエステル型界面活性剤▲乾燥剤(コバルトフリー)▲ケイ酸▲レシチン▲アルコール

石油系溶剤フリー。天然成分だけでつくられた自然塗料の代名詞的塗料で安心感が強い。
但しオレンジ油が使われているものは匂いに好みが分かれるところか。

仕上がり: サラッと自然。クリアの中でも艶が欲し行ければオイル+ワックス効果の2in1など仕上がり具合も豊富で選べる。

10. Watco(ワトコ)Danish Oil

DIY界では超有名だが、主成分は亜麻仁油+ミネラルスピリット(石油由来の溶剤)+樹脂 が多め。
“植物性オイル”というカテゴリーでは弱く、
どちらかというと「混合オイルフィニッシュ」。

仕上がり: 色の深みは素晴らしい。扱いやすくDIY向き。

11. Odie’s Oil(オーディーズオイル)

植物油100%+蜜蝋・カルナバ。溶剤ゼロ。
世界的に人気が爆増している高級志向オイル。
耐水性に優れ、仕上がりがとにかく美しい。

仕上がり: 肉厚で艶やか、1ランク上の質感。

12. Rubio Monocoat(ルビオモノコート)

亜麻仁油、蜜蝋、カルナバワックス、無鉛性乾燥剤
完全VOCフリーの自然健康塗料。一度塗りで完成する“時短の怪物”。
扱いが簡単で、プロも愛用。

仕上がり:基本は均一なマット仕上げ。モダン家具向き。

完全VOCフリー: 揮発性有機化合物を含まない

プロ視点での結論:どう選ぶ?

はっきり言ってこれから示すくくり分けは完全僕の個人的主観だから悪しからず。

【完全植物油で攻めたい人】

  • キヌカ
  • 匠の塗油
  • Odie’s Oil

→ 匂い・安全性重視の人に最適

【耐久性・実用性重視の家具/天板】

  • Osmo TopOil
  • Rubio Monocoat
  • Odie’s Oil(溶剤ゼロで強い)

→ テーブル天板・作業台など

【色味や表現力を優先したい】

  • いろは(和色)
  • U-OIL(カラーバリエーション)
  • リボス(濡れ色の深さ)
  • AURO(アウロ)

→ デザイン家具/作品作りに◎


以上に上がってこなかったオイルは、突出せずともそれなりにほどほどに安定してるってことだ。
とりあえずビール。みたいな。 

いったんまとめる

家具を作っていると、「木の個性に一番付き合ってくれるオイルはどれか?」という話になる。
今回の12点は、どれも木に寄り添う良いオイルだが、
求める仕上がりが違えば選ぶべきものも変わる。

迷ったらこうだ。

  • 自然な手触り → キヌカ・匠の塗油
  • 丈夫さ → オスモ・ルビオ
  • 表情の深さ → リボス
  • 高級感 → Odie’s Oil

あなたの木が、どんな顔になりたいか。
その声を聞くための“道具”として、この一覧を役立ててほしい。

分類 製品名 メーカー 主成分 溶剤 添加物 家具用途 乾燥時間 備考
国内 キヌカ 開発・販売/安土産業
製造・販売/キヌカ
米糠油100% なし なし 1〜3時間/24h実用 完全植物油
国内 匠の塗油 太田油脂 えごま油100% なし なし 3〜6時間/24〜48h 完全植物油
国内 U-OIL NECケミカル 亜麻仁油 / 大豆油 / 桐油 イソパラフィン 乾燥剤 3〜5時間/翌日実用 自然塗料系
国内 いろは RJ 桐油 / 亜麻仁油 / 樹脂 イソパラフィン 蜜蝋 4〜8時間/48h実用 国産自然塗料
国内 バトン 大谷塗料 亜麻仁油 / 桐油 イソパラフィン 乾燥剤 3〜4時間 自然塗料系
国内 ESHA クリアオイル ターナー色彩 亜麻仁油 / テルペン樹脂 イソパラフィン 天然樹脂 1〜2時間/24h実用 植物油ワニス
海外 Osmo TopOil Osmo ひまわり油 / 大豆油 / アザミ油 無臭白灯油 乾燥剤 8〜10時間/翌日実用 欧州自然塗料
海外 Livos KUNOS Livos 亜麻仁油 / キャスター油 イソパラフィン 天然樹脂 8〜12時間/2〜3日実用 自然塗料代表
海外 AURO 家具用(No.930) AURO 亜麻仁油 / 桐油 シトラス溶剤 天然樹脂 6〜12時間 石油溶剤ゼロ
海外 Watco Danish Oil Watco 植物油 + 樹脂 ミネラルスピリット 樹脂 6〜8時間/24h再塗可 混合型オイル
海外 Odie’s Oil Odie’s 植物油100% なし 蜜蝋 / カルナバ 12〜24時間/3日実用 完全溶剤フリー
海外 Rubio Monocoat Rubio 亜麻仁油主体 なし 樹脂(硬化剤B) 24hで80%/5日完全硬化 1回塗りで結合

12種の家具用オイル:クリア色・1L換算価格比較表~結局のところ価格は大事だよね

ここまでそれぞれの特技や成分を確かめてきたが、結局のところ一番肝心なのは何か。
我々小市民にとってはいつも気にせずにはいられない泣所がある。そうだ。価格の問題ですよ。ほんとに。

※価格は 2024–2025 年時点の国内実売価格の中央値から。
※あくまでも価格は目安ですよ。当然販売店・容量・在庫により変動ありありなので。

製品名容量(実売)実売価格(中央値)1L換算価格備考
キヌカ(安土産業)クリア160ml約 2,050円約 12,800円/L完全植物性(米糠油)
匠の塗油(太田油脂)クリア4L約 23,000円約 5,750円/L価格優秀。工業用としても流通
U-OIL(シオン)クリア0.75L約 6,700円約 8,933円/L伸びがよい国産自然塗料
VATON(大谷塗料)クリアFX3.7L約 7,150円約 1,930円/L異様に安い。着色が主用途だが透明もあり
いろは(RJ社)クリア1L約 4,500〜5,200円約 5,000円/L透明ラインは「IROHA 透明」
ESHA(ターナー色彩)クリア1L約 3,500〜4,200円約 4,000円/L水性系自然塗料として人気
製品名容量(実売)実売価格(中央値)1L換算価格備考
Osmo TopOil(オスモ)クリアマット0.5L6,000〜6,500円約 12,000〜13,000円/L2回塗り推奨
Livos KUNOS(リボス)クリア2440.75L約 7,500円約 10,000円/L植物オイル主体
AURO No.930(アウロ)クリア0.75L約 9,000〜10,000円約 13,000円/L透明。あなた指定の 930
Watco Danish Oil(ワトコ)クリア)0.946L(1Qt)約 25,800円約 27,300円/L溶剤系。乾燥早い
Odie’s Oil(オーディーズ)透明266ml9,800〜11,000円約 36,000〜41,000円/L高性能だが超高価
Rubio Monocoat Oil Plus 2C(ルビオ)透明1.3Lセット55,000〜58,000円約 42,000〜45,000円/L1回塗り。硬化剤入り

12種価格ランキング(安い順)

  1. VATON(約1,930円/L) ← 圧倒的でうけるw
  2. ESHA(約4,000円/L)
  3. 匠の塗油(約5,750円/L)
  4. いろは(約5,000〜5,200円/L)
  5. U-OIL(約8,900円/L)
  6. LIVOS(約10,000円/L)
  7. キヌカ(約12,800円/L)
  8. Osmo(約12,000〜13,000円/L)
  9. AURO 930(約13,000円/L)
  10. Watco(約27,300円/L)
  11. Odie’s Oil(約36,000〜41,000円/L)
  12. Rubio Monocoat(約42,000〜45,000円/L)

最後に

ここまでいろんな自然塗料を呼び出して、
成分をしつこく覗き込み、乾燥時間をみつめて、
ああだこうだと比較してみたわけだが、
読んでるあなたもそろそろこう思っているだろう。

「結局、どれがいいのよ?」

だが残念ながら、ここに “唯一絶対の王者” は存在しない。
木工というのは、食べ物の好みみたいなもので、
「カレーはやっぱスープカレーだよね」
「いやいやトロトロの具沢山でしょ」
「いやキーマしかみとめない」
みたいなそういう、どうでもいい論争と似たような世界なのである。

ただし一つだけ言えることがある。

どのオイルも、自分の役割をちゃんと果たす。
勝手に木をテカらせ、勝手に保護し、
勝手に「おっ、いいじゃん」と言わせてくれる。
木は勝手に綺麗になる。オイルも勝手に働く。
問題はただ一つ、
あなたが塗るか塗らないかだけだ。

木材は逃げない。
あなたが腰を上げればいつでも優しく迎えてくれる。

だから本当に大事なのは、
「このオイルでいいや」と軽く決めて
まず一度、布にとって塗ってみる勇気だ。

塗ればわかる。
「あ、木が喜んでる」って。

もし気に入らなければ別のを使えばいい。
人間だってシャンプーや歯磨き粉を変えるだろう。
木も同じだ。意に沿わないのを塗られたからといって、
突然ふてくされてガタガタ文句を言ったりはしない。
(たぶん)

なので、今日比較した12種類は、
あなたが木工という沼に片足を突っ込むための、
とっかかりにすぎない。

さあ、どれでもいい。
キヌカでも、匠の塗油でも、ルビオでも、ワトコでもいい。
いちばんあなたの鼻の穴に合う匂いのやつを選んで、
まずは木にひと塗りしてみてほしい。

木はきっと、しずかに嬉しがる。

そしてあなたは、
もう二度と “オイル仕上げ前の家具” に戻れなくなる。
ようこそ、こちら側へ。

タイトルとURLをコピーしました