日本の三大美林について再確認!

秋田 天然スギ林 木材
出典:http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/ 

今回は日本国内において「美林」と呼ばれる3つの天然の森林についてまとめてみました。








三大美林

はじめに、森林には天然林と人工林、そして原生林と呼ばれるものががあります。

その違いは『天然林と人工林、原生林の違い』のページで書いていますが、中でも天然林と人工林にはそれぞれに三大美林と呼ばれる森林があります。

天然の三大美林
天然の三大美林 人工の三大美林

青森ヒバ【青森県】

天竜スギ【長野県】

秋田スギ【秋田県】

尾鷲ヒノキ【三重県】

木曽ヒノキ【長野県】

吉野スギ【奈良県】

日本人に最も身近な木材であるスギとヒノキ、ですが人工林においてもこのようになっています。

日本の国土2/3が森林となっていますが、そのほとんどはこのように針葉樹が占めているようです。

針葉樹を家具にもうまく活用できるといいですね。
https://mokuseikagu.com/shinyoujunoshurui/

青森のヒバ林

青森天然ヒバ林

出典:https://www.pref.aomori.lg.jp

通常、青森ヒバと呼ばれるものはヒノキ科のヒノキアスナロといった名もあり、一見、ヒノキと似ているのかと思いきや、一般に「ヒノキ」とよばれている木とは違うようです。

「ヒノキアスナロ」は青森を含む北海道から関東北部までに分布するものを指し、単に「アスナロ」というと本州の高い山地や四国、九州に分布するものを指します。

ヒバ(ヒノキアスナロ)のうち80%が青森のヒバ林に分布していますが、16世紀後半から当時の藩主によって厳しく守られてきたことで今も尚、三大美林のひとつとしてその美しさが保たれています。

ヒバの中でも特に青森ヒバ(ヒノキアスナロ)はスギやヒノキ等に比べ、その生長スピードが3倍ほどかかり、直径70センチほどになるまでにおよそ300年ほどもかかり、成長が遅い分、きめ細かい素材となり、木目も美しいのですが、その最大の特徴として「ヒノキチオール」という低毒性ながら非常に抗菌作用の強い成分が多く含まれている点です。

そのため建材として使う時の効果として防水、防腐、防虫効果も高く、シロアリなどの忌避作用も併せ持ち、高級材として扱われてきました。

青森ヒバの相場として、とある木材店では芯なし節ありの柱材、4000*105*105で18000円/1本で売られていました。 もっとも普及されているスギの建材で4000*105*105だと4000円/1本程度から売られていますので、そこからもその高級さがわかります。

また、青森ヒバは古くから城や寺社仏閣などに使われ、有名どころでは岩手県にある平泉中尊寺の金色堂などがそれにあたります。

平泉中尊寺の金色堂 出典元:https://www.chusonji.or.jp/know/konjikido.html

秋田のスギ林

秋田 天然スギ林

出典:http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/

今では全国各地で目にするスギ林ですが天然林としては秋田のほか、屋久島が有名です。他にも佐渡島大佐渡小杉立・舟山天然スギ林や高知県の魚柳瀬スギ天然林などがあります。

そんななかでも秋田の天然杉は古くは豊臣秀吉の時代から城の修復、城下の整備などにわざわざ都まで運ばれて使用されていたようです。

特に1602年以降、大量に伐採され、もともと原生林だったスギ林は約100年間で切り尽くされます。
その後秋田藩は山林を一定区域に分け、伐採順序を決め、30年ごとに順番に切り出す「番山繰制度」、択伐後に実生をそだてる天然林方式など、再びおよそ100年間の試行錯誤の末、美林を蘇らせたのでした。

天然秋田スギは人工林に見られるように間伐などは行われていない上、秋田の厳しい気候も重なり、成長はゆるやかなため、年輪の目が細かく、赤みは強く、非常に美しくバランスの取れた木目となり、爽快な香りがあり、強度的にも住宅の建材として十二分な木材として重宝されると当時に桶や樽、曲げわっぱなどの伝統工芸品の材料としても利用されています。

しかし、近年の資源量の減少から天然の秋田杉の供給は2012年に停止されたため、現代では「秋田スギ使用」と言えば人工林で育った杉を使ったことになります。

また、スギは日本にしか生育していない固有種で枝と葉の形質から主に太平洋側に分布する「オモテスギ」と日本海側に分布する「ウラスギ」に別けられ、両者は遺伝的に違いがあるとされていますが、秋田のスギはウラスギにあたります。

出典:東北森林管理局

木曽(長野)のヒノキ林

木曽谷 天然木曽ヒノキ林

出典: http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/

木曽のヒノキ林は室町時代から伐採され、鎌倉時代には主に寺社の建造物に使われつづけ、その後戦乱がおさまると各城下町を中心に建築ブームもあり、江戸時代に入ってまもなく枯渇してしまいました。

その後、尾張藩は木材資源をいつまでも減らさずに供給し続ける山林づくりを目指すため、厳しい森林保護政策をはじめます。
その厳しさは「ヒノキ1本首ひとつ」といった掟もできたほどです。
抜き刈りを行いながらも太い木を育てていく「六十六年一周之仕法」と呼ばれる技術を駆使し、ついには美林を復活させることに至りました。

木曽のヒノキは山の傾斜が険しく、雨が多く寒さが厳しい自然環境のため、生長に時間がかかるため、他の地域のヒノキに比べて成長に2倍近くの時間を要します。

その結果青森ヒバ、秋田スギと同様で木目が細かい材木になるのが特徴です。また、弾力性があり、美しい白い色を長期間保つことができるのも木曽ヒノキの特徴ですが近年、木曽のヒノキ林に問題が生じているようです。

もともとヒノキは老木になっても簡単には枯れませんが、近年の択伐の方法では生態系の破壊を考慮し、切り抜き率は20~30%のとどめていたようです。

しかしこの割合ではヒノキの苗が育つほどの日光が不十分で、代わりに日陰に強く、生命力のあるアスナロが多く育ち始め、ヒノキを脅かす存在となっている、ということです。

以下、中部森林管理局のサイトより一部抜粋

 現状では後継樹の自然発生が期待できないことから将来が懸念される状況にあります。このため、200~300年先を見越し、今から次世代の木曽ヒノキ林を育成していくことが必要となっているのです。

~省略~ また、木曽谷は日本三大美林の一つ、木曽ヒノキの産地として全国にその名が知られており、現在でも林業・林産業が木曽谷の主要産業となっています。

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出典:中部森林管理局

最後に

今回は天然の三大美林についてまとめてみました。

調べてみて大きな発見となったのは、三大美林として一般的にも認知されている今回の3つの森林。

これらはそれぞれに抱える問題もあり、特に

  • 木材として安定供給できているのは三つのうち、青森ヒバのみ、と言うこと
  • 国内の木材自給率は平成29年時点で国内供給量の30%程度であること

昭和30年に94パーセントだったところから平成12年で18パーセントまで下降し、少し上がってはいますが、これは針葉樹合板などの木質材の原料に国内材が使われるようになってきたのが要因のようです。

もはや天然美林には木材供給をあてにできる状況でない今、他の天然林や多くの人工林はすでに伐採できる時期にある、とのことなので、数字が上がるのが良いのか悪いのか、はともかく今後の国内自給率に注目したいと思います。

天然林と人工林、原生林の違いについてはこちら








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