ウィンザーチェア
このページではウィンザーチェアについて調べた要点を備忘録としてまとめています。
ウィンザーチェアとは
「ウィンザーチェア」の語源は諸説あるものの、概ねイギリス、ロンドンの西側にある町、「windsor(ウィンザー)」に由来する。
その歴史は17世紀後半からと見られているがそれ以前から各地の挽物職人や車大工などは簡素な挽物椅子をつくっていたので実際の所、ウィンザーチェアのルーツはもっと昔からあったと考えられる。
いずれにしても座板と笠木以外はほぼ挽物の部材で構成されているのが最大の特徴。(例外もある)
ウィンザーチェアの材料と特徴
ウィンザーチェアがウィンザー地方で多く作られるようになる以前、ヨーロッパの上流階級者の間ではマホガニーやサテンウッドなどの高級木材を用いた猫脚をはじめとした装飾豊富で布張りの椅子が主流だった。
それに対して、初期のウィンザーチェアは地元で採れる木材を混ぜて使い、効率的に分業で量産することができたため、庶民にも行き渡り、上流階級のみならず、一般家庭でも定番となった経緯がある。
当時のウィンザー地方周辺にはchiltern hills(チルタンヒルズ)という丘陵地帯があり、そこは多くの木材に恵まれていた。
そこではボッジャ-(bodger)と呼ばれる挽物職人、座板を手斧などで仕上げるボトマー(bottomer)。彼らが仕上げたパーツを組み立てるフレーマー(framer)、塗装や仕上げを担当するフィニッシャー(finisher)がそれぞれに分かれてウィンザーチェアの製作に当たっていた。
効率的な分業体制だったため、例えば座板にはelm(楡【ニレ】)、脚や貫などの挽物加工にはbeech(橅【ブナ】)、曲げ木部分にはash(梻【タモ】)が主に使われていた。
一脚の椅子で部材ごとに色味が違ってしまうのを防ぐため、色は黒や濃いめの褐色で仕上げていた。
ウィンザーチェアの種類
コムバック(櫛型)
初期のウィンザーチェア(18世紀前半まで)の背もたれ部分は笠木から座板まで数本の挽物部材(スティック)で平行につながれている。
脚部もシンプルで、座板に脚が突き刺しただけの構造または、左右前後の脚をつなぐ貫がありその中央部あたりで左右をつなぐトンボ(つなぎ)でつながれている。
※「ウィンザーチェア コムバック」画像検索結果
ファンバック(扇型)
18世紀半ば、背もたれ部で平行に組まれていたスティックは次第に上部に向かって広がる扇形に組まれるようになる。
※「ウィンザーチェア ファンバック」画像検索結果
フィドルバックスプラット(バイオリン型背板)
平行(コムバック)や扇型(ファンバック)にスティックを組むだけでは無く、中央部にやや幅広のバイオリン型装飾板を組み入れたものを「フィドルバック・スプラット」と呼ぶ。
中でも透かしの入った物を「チッペンデール・スプラット」とも呼ぶ。
ボウバック(弓形)・フープバック(輪型)
18世紀半ばからつくられ人気が出たのが笠木が弓形につくられたアームチェアでこれを「ボウバック」または「フープバック」と呼ぶ。
※「ウィンザーチェア ボウバック」画像検索結果
ラスバック(細い平板)
19世紀に入ると「ラスバック」と呼ばれるウィンザーーチェアも出現する。
これはそれまで背もたれに挽物の丸棒を使用していたのが人の背に沿うように曲げられた平板状のものが使われている。
※「ウィンザーチェア ラスバック」画像検索結果
スクロールバック(横棒)
さらには「スクロールバック」と呼ばれる背もたれの縦に組まれていたスティック自体が無くなり横に平板が組まれるだけの形のものもつくられた。
こう聞いただけではもはや初期の面影は無い様に聞こえるが見てみると脚部分、座板に四方転びで突き刺さる構造は相変わらず「ウィンザーチェア」そのもの。
※「ウィンザーチェア スクロールバック」画像検索結果
ローバック(低い背)
19世紀にはアール状につくられた肘掛けの上部分が低い「ローバック」が流行した。
中でも「スモーカーズ・ボウ」と呼ばれるウィンザーチェアは19世紀半ばから1930年代まで大流行していたがこの名前の由来はパブなどの飲食店で煙草を吸いながら一服している人々が多かったところからそう呼ばれるようになった。
産業革命により機械で大量生産ができる様になったことでリーズナブルな価格で売られ、」一般家庭でも使われた。
※「ウィンザーチェア ローバック」画像検索結果
※【木製椅子の種類】ラダーバックチェアについて