「技能士」という国家資格について

木製家具関連

技能士という国家資格についてあらためて調べてみました。

技能士とは

それぞれ働く人々に必要な一定以上の技能を技能検定により国が証明することで、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図る

といった狙いの元、国が定めた制度です。

その結果、実際には業界や会社により大きく違いますが、昇給昇格に繋がったり、転職などの際に信用、信頼のプラス材料にもなるでしょう。
又、会社にとっては、業務に関係する国家資格所有者がたくさんいるほど会社の格が上がりますから結果的にそこで働く従業員にもプラスになるはずです。

ただ現実的には他の国家資格にくらべ「技能士」の認知度は低く、よってその評価も低いのが現状ではないでしょうか?

その辺りも含め、今一度「国家資格」である「技能士」について具体的に確認していきます。









国家資格の定義

最初に国家資格について少し確認しておきます。

国家資格とは、一般に、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるもの
wikipediaより引用

国の法律に基づいて~ということなので、都道府県や市町村等の定めた条例に基づいて与えられる資格は国家資格ではなく公的資格となります。
(今現在、「公的資格」と称される資格には公共機関が積極的に試験などで認定している物は無く、申請のあった民間の資格に対して一定の基準で後援している程度のものも含まれるので曖昧なところです。)

国家資格の種類

国家資格の付与条件には試験の他に特別教育や技能講習を受ける事で得られる物もあり、その名称も「免許」や「許可」など、用語は特に定められていません。
しかしその資格を必要とする意味としては次の3つの呼び方があります。

  • 業務独占資格
  • 名称独占資格 
  • 必置資格

業務独占資格

「業務独占資格」は認知度の高い資格が多いですがそれもそのはずで、通常、法的に禁止されている行為を行う人や法令で定める管理監督者への就任など、私達の安全や衛生、公正な取引を実現する上で重要な業務に対して与える資格です。

○業務独占資格の例

医師、歯科医師、公認会計士、弁護士、税理士、弁理士、一級建築士、不動産鑑定士、行政書士、司法書士、土地家屋調査士、薬剤師、獣医師、測量士、助産師、看護師、理学療法士、作業療法士、救急救命士、歯科技工士、はり師、あん摩マッサージ指圧師、理容師、美容師、一級海技士、事業用操縦士航空通信士、消防設備士、電気工事士、ボイラー整備士、宅地建物取引士など

他にもたくさんありますが確かに普段からよく耳にする資格ばかりです。
因みに、多くの人が取得している自動車の運転免許もここに属します。

名称独占資格

「名称独占資格」は

資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が法令で禁止されている資格wikipediaより引用

ということで、「業務独占資格」にはこの「名称独占資格」と重複する意味もあることがわかります。

「技能士」という国家資格はこの「名称独占資格」に当てはまります。

○名称独占資格の例

社会福祉士、介護福祉士、保育士、保健師、調理師、栄養士、管理栄養士、技術士、技能士、マンション管理士、土地区画整理士、気象予報士、林業技士、労働衛生コンサルタントなど

※ここには例として業務独占資格と重複しないものを挙げました。

必置資格

ある事業を行う際に、その企業や事業所にて特定の資格保持者を必ず置かなければならない、と法律で定められている資格。
wikipediaより引用

これも業務独占資格や名称独占資格が重複した性質を持つ場合があります。例えば病院における医師や看護師だったり建設会社における一級建築士がそれにあたります。

○必置資格の例

例として理・美容所における理容師・美容師、保育所における保育士、建築士事務所における管理建築士。
 他にも、危険物取扱者、クリーニング師、原子力発電所運転責任者、高圧ガス製造保安責任者、指定自動車教習所指導員、自動車検査員、浄化槽検査員、消防設備士、飼料製造管理者、電気主任技術者、防火管理者、麻薬取扱者、木材加工用機械作業主任者、旅行業務取扱管理者などなどたくさんあります。

技能士の種類

国家資格の中では知名度は低いと思われる「技能士」ですがどの様なものがあるのか参考として例を挙げます。

建築関係
造園技能士、建築板金技能士、防水施工技能士、石材施工技能士、内装仕上げ施工技能士、かわらぶき技能士、とび技能士、左官技能士、ブロック建築技能士、ガラス施工技能士、タイル張り技能士、配管技能士、塗装技能士、鉄筋施工技能士などなど
金属関係
鉄工技能士、鋳造技能士、鍛造技能士、めっき技能士金属熱処理技能士、金型製作技能士、金属プレス加工技能士、切削工具研削技能士、ダイカスト技能士、金属材料試験技能士、工場板金技能士などなど
一般機械器具関係
機械検査技能士、産業車両整備技能士、縫製機械整備技能士、鉄道車輌製造・整備技能士、建設機械整備技能士、農業機械整備技能士、テクニカルイラストレーション技能士、機械・プラント製図技能士などなど
電気・精密機械器具関係
電子回路接続技能士、電子機器組み立て技能士、自動販売機調整技能士、電気機器組み立て技能士、光学機器製造技能士、半導体製品製造技能士、電気製図技能士などなど
食料品関係
パン製造技能士、水産練り製品製造技能士、菓子製造技能士、製麺技能士、みそ製造技能士、酒造技能士などなど
衣服・繊維製品関係
染色技能士、紳士服製造技能士、ニット製品製造技能士、和裁技能士、寝具製作技能士、婦人子供服製造技能士、帆布製品製造技能士などなど
木材・木製品。紙加工品関係
機械木工技能士、紙器・段ボール箱製造技能士、家具製作技能士、畳製作技能士、建具製作技能士、表装技能士などなど
その他
プラスティック成型技能士、時計修理技能士、貴金属装身具製作技能士、製版技能士、製本技能士、舞台機構調整技能士、ロープ加工技能士、写真技能士、印章彫刻技能士、塗料調色技能士、フラワー装飾技能士などなど

以上は2017年4月現在に都道府県の職業開発協会により検定試験が実施された職種ですが、他にも指定試験機関により実施される職種に次のものなどがあります。

職業能力開発協会以外の指定機関により実施される職種
ウェブデザイン技能士、ビル設備管理技能士、機械保全技能士、キャリアコンサルティング技能士、情報配線施工技能士、ピアノ調律技能士、ファイナンシャルプランニング技能士、ビルクリーニング技能士、知的財産管理技能士、金融窓口サービス技能士、着付け技能士などなど

 

最初にも書きましたが、

「技能士」にはそれぞれ働く人々に必要な一定以上の技能を技能検定により国が証明することで、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図る目的があります。

確かに技能士試験を受けることで実際に技能が高まるのはもちろん、自分のモチベーション維持に繋がることと思います。

家具製作技能士

家具製作技能士のはじまり

家具製作技能士の資格化されたのは昭和34年に始まった技能検定が始まって2年後の昭和36年。「家具工」という項目で、「指物」と「椅子製作」に分かれて始まったようです。

それとは別に「椅子張り工」という項目が昭和40年に始まります。

その後昭和44年に今と同じ「家具製作」と言う項目になり48年には「椅子製作」が「椅子木地製作」に変わります。

昭和57年になると「指物」、「椅子木地製作」が無くなり「家具手加工作業」と「家具機械加工作業」に分けられました。

一方「椅子張り工」は平成5年に「椅子張り作業」に変更されています。
その後現在まで変わりなく続いている状態ですから今年で57年もの歴史になります。

技能検定試験要項

前述のとおり現在、家具製作部門には「家具手加工作業」と「家具機械加工作業」、「椅子張り作業」の3つがありますがいずれも1級と2級があり、確認したところ「家具手加工作業」には実は3級もあるようです。(おそらく受験者はほとんどいないと思いますが)

それぞれ受験資格が設けられています。

  • 1級:7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験
  • 2級:実務経験2年以上

※受験資格には職業訓練や学歴等により短縮される場合がありますので詳しくは厚生労働省のホームページでご確認ください。

※または各都道府県職業能力開発協会

 

試験の実施は各都道府県の職業能力開発協会が行いますので、試験の日時などには違いがみられます。

試験会場の雰囲気や受験人数などもそれぞれなので各都道府県の情報を確認してから受ける場所(会場)を検討することをおすすめします。
各都道府県職業能力開発協会

私の経験と聞いた話では、都道府県により受験者数が数名しかいなかったり、建具製作の受験者と一緒だったり、立ち机だったり、あて台(座って)だったりで、結構受験の環境が違ったりします。
例えば東京は受験人数が多いため、作業スペースが比較的狭いと思います。(私が知る限りではあて台使用)

結局技能士試験を受けるメリットは?

国家資格の取得を目指す時、大抵は自分がやりたい仕事、なりたい職業に必要だからといった動機で勉強や、訓練に励む事かと思いますが、「技能士」に関してはそうではありません。

他の科目は分かりませんが、「家具製作技能士」の資格はほとんどの職場で「必要だから取得しなさい」とは言われないし、なくても全く問題ありません。

どちらかというと必置資格である「木材加工用機械作業主任者」の方が重宝されるでしょう。(こちらは検定試験ではなく講習を受けるだけで取得できますが実務経験3年必要)。

家具業界における家具製作技能士

技能検定を受けて技能を向上させ、会社待遇も良くなる職種もあるかと思いますが、残念ながら家具業界(特に無垢家具製造業)でそういった話は聞いたことがありません。

ベテランの諸先輩方に聞けば、昔は技能士資格を取ることで手当があったり、景気の良かった話も聞けますが、昨今では木工業界の低迷と共に、置き家具をつくる家具職人は本当に厳しい状態です。

二極化進む? 家具・木工業界における無垢家具をどう見るか

今時、おそらくほとんどの木工所では、まともに手工具を使った手加工は行わないでしょうし、機械加工においても毎日、行う作業は決まったことに限られるはずですから、普通に働いていればその職場で必要な技術は身につくものです。

それでも「技能士」の検定試験を受けることのメリットはなんでしょうか?

私が考えるメリットとして

  • 職人としてのモチベーション維持
  • 技術の向上
  • 知識の向上
  • 独立後の多少の信用・信頼

が挙げられます。

特に例えば職業訓練校や、各種学校で木工の基礎を習い、家具工場などで就職した場合、学校で教わった基礎知識と工場の現場のやり方は合致しないことも多いでしょう。

割り振られた自分の仕事は学校で習ったことのほんの一部でしか無いかも知れません。
そしてそのまま仕事だけ続けていても、せっかく勉強してきたことはどんどん忘れていきます。
いずれ独立を考えていたり、自分の腕を上げたいと望むなら、仕事だけでなく、自分がやっている仕事に関する事を積極的に練習したり、知識を得ることは決して無駄にはならないと思います。

こういうことは最初が肝心かと思います。
人は慣れるとどんどん堕落してしまいますから、早い内に試験問題や課題を実際にやってみたりすることでモチベーションは下がらずに、仕事も充実するのではないでしょうか。

検定試験は極端に難しいものではありませんが、合格するためにはそれなりの練習が必要ですし、学科では練習問題を解いてみるなど、ある程度の勉強は必要不可欠です。

なので必然として受ける人と受けない人に能力の差が生まれると思いますのでそれだけでも受ける価値があると思います。

独立を考える場合、一般的に認識は少ないかも知れませんが、名称独占資格ですから、積極的に国家資格である「技能士」を名乗ることで、無いよりは信用・信頼につながることでしょう。
私もこの部分が大きな動機となり、受ける事にしました。仕事を得る伝手(つて)が何も無いところから商売を始める、となれば特に最初の早い内に信用を得なくてはなりませんし、結局は人それぞれの独立の形があるとは思いますが、私の場合は「技能士」を最大限活用したいと考えました。

と言うことで「家具製作技能士」なんて取っても意味がない、という人もいますが私はそうは思いません。

面倒でもやってみる価値は十分にあると思いますので、迷っている方はやってみた方が良いと思います。

本当はもっと会社や世間も評価してくれると良いんですどね。。。








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