ホームセンターで簡単に手に入る木材で「ツーバイ(2×)材」という材料があります。
このツーバイ材は元々、ヨーロッパからの開拓者によってアメリカで効率よく建物を建てる為に開発された木材です。
19世紀初めにはじまり、改良を重ねた後、今ではアメリカの木造住宅の大半がこのツーバイ材による「ツーバイフォー(2×4)工法」によるものとなっています。
日本ではこのツーバイ材をDIYで利用する方も多いのではないでしょうか?
というかDIYで使う材料としてはコスパが最高クラスだと思います。
今回はこのツーバイ材を使う時にふと思う、ある素朴な疑問について調べてみました。
ツーバイ材のサイズについての疑問
ツーバイ材は「two by materials」、つまり厚み2インチの材料と言うことになりますが、
実際にツーバイ材で何か作ろうとしたときに紛らわしいのは実寸法が全然2インチではない、というところです。
これは厚みの2インチだけでなく、例えば2×4材なら4インチのはずの巾も全く4インチではないのです。
1インチ=25.4㎜ なので
2インチ=50.8㎜のハズですが実際に測ってみると約38㎜なのです。
その差約13㎜。コレは如何に??
と思う方は多いと思います。
ツーバイ材の規格 呼称と実サイズ
ツーバイ材にはJASによる規格サイズがあります。
呼称 | 型式 | 実寸法(㎜) |
---|---|---|
2×3(ツーバイスリー) | 203 | 38×64 |
2×4(ツーバイフォー) | 204 | 38×89 |
2×5(ツーバイファイブ) | 205 | 38×114 |
2×6(ツーバイシックス) | 206 | 38×140 |
2×8(ツーバイエイト) | 208 | 38×184 |
2×10(ツーバイテン) | 210 | 38×235 |
2×12(ツーバイトェルブ) | 212 | 38×286 |
あくまでも1インチ=25.4
なので、これらの実寸法は単純にインチからメートルに変換した寸法とはほど遠いことが分かります。
単純にインチをミリメートルに変換したものと実寸法を比べ、その差をみてみると
呼称(㏌) | 変換(㎜) | 実寸法(㎜) | 差(㎜) |
---|---|---|---|
2 | 50.8 | 38 | 12.8 |
3 | 76.2 | 64 | 12.2 |
4 | 101.6 | 89 | 12.6 |
6 | 152.4 | 140 | 12.4 |
8 | 203.2 | 184 | 19.2 |
10 | 254.0 | 235 | 19.0 |
12 | 304.8 | 286 | 18.8 |
なんとなく一定の法則がありそうですね。
ツーバイフォーとは名称に過ぎない
ここからは私の推測もまじりますが、なぜ、ツーバイ材の呼称と実際のサイズが合わないのかをツーバイフォー工法の誕生の理由から考えてみます。
発祥は北米。19世紀初頭です。
ヨーロッパ大陸から渡ってきた開拓民たちは先ず、わずか250人程度のシカゴにツーバイフォー工法の最初の建築物となるセントメリー教会を建てました。
未だ未開拓の北米大陸は広大でその環境も様々な上、十分な材料や職人たちも充実していません。
そんな中、効率を最優先した建築工法、及び材料確保を考えざる得なかったでしょう。
インチ寸法をそのまま実寸で規格にしてしまうとこの効率、と言う意味で問題が起きます。
どういうことかというと、
材料を製材する際、例えば12インチを半分にして6インチが2つとれれば効率的ですが、実際には刃物の厚み分も無くなってしまって6インチを2つとれません。
それに加え無垢の木材は縦に切断するとその都度、大なり小なり反りが生じます。
それを改めて平らにするにはまたジョインターやプレナーという機械で削る必要もあるわけです。
つまりその修整分として呼称寸法より規格化した寸法を一定量小さくしておく必要があるわけです。
上の表で、幅が広いものの方が数値差が大きくなっているのは幅広の木材の方が反り方が大きかったり、修整しながら使うのが難しいからではないでしょうか。
実際にはインチで製材すると下表の実寸法で規格化しているのだと思われます。
呼称(㏌) | 実寸法(㏌) | ㎜に変換 |
---|---|---|
2 | 1+1/2 | 38.1 |
3 | 2+1/2 | 76.2 |
4 | 3+1/2 | 88.9 |
6 | 5+1/2 | 139.7 |
8 | 7+1/4 | 184.15 |
10 | 9+1/4 | 234.95 |
12 | 11+1/4 | 285.75 |
コレを基に日本では㎜に変換し、小数点以下は四捨五入することで、JAS規格の寸法で扱われるようになった、という事だと思います。
ということで、「2×4(ツーバイフォー)」や「2×6(ツーバイシックス)」というのは実寸法を言っているのではなくただの呼称というわけです。
ツーバイ材には未乾燥材もある
因みにですが、時々この疑問の回答として、「乾燥分として実寸法が小さくなっている」といった説明がされているのを見かけますが、それは間違った説明だと思います。
私達がホームセンターで良く目にするツーバイ材の材料は乾燥処理がされている物がほとんどだと思いますが、JASでは未乾燥材のツーバイ材も規格化しています。
未乾燥材の場合下表のような寸法です。
呼称 | 型式 | 実寸法(㎜) |
---|---|---|
2×3(ツーバイスリー) | 203 | 40×65 |
2×4(ツーバイフォー) | 204 | 40×90 |
2×5(ツーバイファイブ) | 205 | 40×117 |
2×6(ツーバイシックス) | 206 | 40×143 |
2×8(ツーバイエイト) | 208 | 40×190 |
2×10(ツーバイテン) | 210 | 40×241 |
2×12(ツーバイトェルブ) | 212 | 40×292 |
さすがに乾燥分で13㎜程度もの収縮はないことが分かると思います。
木材の乾燥方法による違い AD材 KD材 グリーンウッド 含水率などまとめ
SPF材はツーバイ材の一種
ここまで説明してきたとおり、ツーバイフォー工法といった工法に使うための木材をツーバイ材、と言いますが、ホームセンターなどの店舗によっては「SPF材」という名称で売られていることもあります。
これはツーバイ材と同じ意味だと思ってしまいがちですが、厳密には「SPF」は
樹種の名前の頭文字3つをひっくるめての呼称です。
- S⇒スプルース
- P⇒パイン
- F⇒ファー
全てマツ科の樹木で似ているのでツーバイ材としてまとめて扱っているため「SPF材」として流通していますがツーバイ材には「SPF」以外の樹種も使われるので
SPF=ツーバイ材とは言えません。
最後にツーバイ材を伐採から製材していく過程がよく分かる動画を見つけましたので貼っておきます。