ペンキとニスの違いとは?
ホームセンターの塗料売り場というのは、どうも人間を惑わせるために存在しているんじゃないか、と時々思う。
棚一面ずらりと並ぶ缶たちが、妙に得意げな顔をしてこちらを見てくる。
「ペンキ」「ニス」「カラーペイント」「水性なのに油っぽいやつ」、
もう勘弁してくれ、である。
プロの現場ではこんな単語はまず使わない。
家具屋に「ペンキあります?」なんて聞いたら、たぶん微妙に笑われる。
あそこは“ウレタン”“ラッカー”“オイル”“漆(うるし)”といった、
成分でモノを語る世界なのだ。
ところが一般向けになると、急に言語が乱れる。
メーカーが思いつくままに命名したのか、それとも
商談の途中で担当者が昼飯を食べながら決めてしまったのか、
とにかく種類分けがカオスである。
例えばこんな具合だ。
- 油性ニス
- カラーニス
- カラーペイント
- 水性ペンキ
- 油性ペンキ
- ウッドステイン
- 水性ステイン
- ステインカラー
……「おい、落ち着け」と誰か言ってほしい。
ここまで来ると、もう哲学である。
消費者に理解させる気があるのかどうか、私は疑い始めている。
ペンキとニス|まずは結論
| ペンキ | ニス |
|---|---|
| 色がついて下地を塗りつぶす | 透明で下地が透ける |
これが最大にして、ほぼ唯一の決定的な違いだ。
まずこれを頭に置いておけば、塗料売り場で迷子になる確率が半分くらい減る。と思う。
ペンキとは何か?
「ペンキ」――よく聞くけど、よく考えると妙な響きの言葉だ。
■ ペンキの語源はオランダ語「pek」
ペンキ:(pek の訛り)ペイント、特に油ペイントのこと。
— 広辞苑
語源を辿るとオランダ語の pek(ペク)。
これが日本に渡ってきたとき、なぜか
“ペンキ”という愛嬌のある姿に変わってしまった。
■ 日本で“ペンキ”という言葉が混乱している理由
つまりペンキとは、本来は 油性の不透明塗料 のこと。
だが日本では歴史の途中で意味がふくらんだり削れたりして、
- ペンキ=塗料全般
- ペンキ=昔ながらの油性塗料
という 二つの解釈が併存する混沌状態 にある。
実際、ネットで「ペンキ 意味」と検索すると、
“塗料全般説” と “油性塗料限定説” が半々くらいで出てくる。
塗装屋さんのサイトでも意見が割れている。
■ ペンキの実用的な理解(まとめ)
- ペンキはオランダ語「pek」が語源
- 昭和では油性塗料が主流 → 塗料=ペンキ化
- 今では意味が二極化
- 共通点:不透明で色がつき、塗膜をつくる
→ 実用上は「不透明で色がつくもの=ペンキ」で OK
ニスとは何か?
「ニス」。
中年以上の世代では“木に塗るものの総称”みたいな扱いだったが、これもなかなか歴史が深い。
■ ニスの語源|Varnish → ワニス → ニス
Varnish(バーニッシュ)が日本で「ワニス」と訛り、
さらに短縮されて「ニス」となった。
— Wikipedia
ワセリン(vaseline)、ワクチン(vaccine)と同じ、
V → ワ行へ変化する日本語の癖の典型例。
■ ニスの特徴(辞書に共通する定義)
- 透明である
- 塗膜をつくって表面を保護する
つまりニスとは
「透明で、表面に膜をつくる塗料の総称」
極論すれば、これさえ守っていればニスと呼べる。
つまり、
- カラーニス → 透明+色付きの保護膜
- 油性ニス → 油性成分で透明保護膜
- ウレタン、ラッカー、漆 → 実は全部「ニスの一種」
ということ。
「漆もニス?」と思うかもしれないが、
定義上は “透明(もしくは半透明)の保護膜をつくる塗料”
だから含まれる。
塗料の世界は意外と度量が広い。
ニスの実用的な理解
- ニス=Varnish の日本語変化
- 透明で木目が透ける
- 表面を保護する塗膜ができる
- 漆もウレタンも広義ではニス
→ 結論:ニス=透明な塗膜をつくる塗料の総称
■ あらためてニスのまとめ
- ニス=透明な保護膜をつくる塗料全般
- 成分は多種多様、歴史も深い
- 家具の世界ではウレタンやラッカー、漆までもがニスに含まれる
- 結局のところ
「透明で木目が見え、表面を保護するならニス」
と覚えておけば十分戦える。
最終的にまとめ
- ペンキは「色で塗りつぶす」塗料
- ニスは「透明で木目を生かす」塗料
実用上はこの理解で十分。
専門の現場では成分名で呼ぶので、ペンキやニスという言葉自体があまり出てこない――という構図。


