はじめに
この記事では、無垢材をすすめもしないし、否定もしない。
どちらが良いか、という判断もしない。
やることは一つだけだ。
言葉を整理する。
家具の話が噛み合わなくなる原因の多くは、
好みでも価値観でもなく、
前提となる言葉のズレにある。
そのズレを、ここで一度、平らにする。
無垢材とは
無垢材とは、
一本の木から切り出し、乾燥させ、そのまま使われる木材のことを指す。
削る、切る、組む。
工程はあるが、
材料そのものを作り直す工程はない。
「混じりけのない木」という説明がされることも多いが、
実態として重要なのはそこではない。
無垢材とは、
木を“材料として加工する”のではなく、
木を“素材として扱う”考え方
その結果として生まれる呼び名だ。
無垢材が「特別な言葉」になった理由
本来、木材とは無垢材だった。
木を伐り、乾かし、使う。
それ以外の方法がなかったからだ。
ところが20世紀以降、
木を砕き、剥ぎ、貼り、固め直す技術が普及した。
すると、
- 原料は木
- 見た目も木
- でも性質はまったく違う
という材料が一気に増えた。
結果として、
ただ「木材」と言っただけでは話が通じなくなり、
区別のために生まれた言葉が「無垢材」だ。
無垢材が特別なのではない。
時代がややこしくなっただけである。
無垢材と木質材料の違い【超要約】
無垢材と木質材料は、
見た目が似ていても、成り立ちがまったく違う。
- 無垢材
→ 一本の木をそのまま使う素材 - 木質材料
→ 木を原料にして作られた工業材料
違いは「良し悪し」ではなく、
設計思想の違いだ。
木質材料とは(無垢材との対義語)
木質材料の定義
木質材料とは、
木を原料として、人為的に再構成された材料を指す。
木を薄く剥ぐ、細かく砕く、粉にする。
それを接着剤で固め、
板や棒として再形成する。
ここで重要なのは、
木質材料の主役は「木」ではなく、
構造と接着だという点だ。
代表的な木質材料
家具でよく使われるものには、以下がある。
- 合板
- MDF
- パーティクルボード
- 集成材
いずれも、
安定性・量産性・均一性を重視して作られている。
この定義が、
実際の売り場や広告の中で、
どう歪められて使われているかについては、
別の記事で触れている。
「天然木」表記が生む誤解について
無垢材の分類
針葉樹と広葉樹
無垢材は、大きく二つに分けられる。
- 針葉樹
- 広葉樹
これは用途や好みの話ではなく、
生物学的な分類だ。
針葉樹は成長が早く、繊維構造が比較的単純。
広葉樹は成長が遅く、繊維構造が複雑なものが多い。
その結果として、
- 軽さ
- 硬さ
- 加工性
- 見た目の密度
に違いが生まれる。
家具に使われる理由
家具では、
加工性と耐久性、見た目の安定性から、
広葉樹が使われることが多い。
これは優劣ではなく、
用途に対する相性の問題だ。
無垢材のメリット(事実のみ)
無垢材には、次のような性質がある。
- 木そのものの風合いが残る
- 使うほどに色や艶が変化する
- 表面を削ることで再生できる
- 修理や手直しが前提になる
これらはすべて、
無垢材が「生きていた素材」であることの延長だ。
無垢材のデメリット(事実のみ)
一方で、無垢材には以下の性質もある。
- 温湿度によって収縮・反りが起こる
- 一本ごとに個体差がある
- 材によっては重量がある
- 価格が安定しにくい
これらは欠陥ではない。
無垢材という素材の性質である。
無垢材という言葉が誤解されやすい理由
無垢材は、
次の言葉と混同されやすい。
- 天然木
- 木製
- 突板貼り
特に「天然木」という表示は、
無垢材かどうかを判断する材料にはならない。
無垢材か否かは、
構造の問題であり、
見た目や言葉の印象では決まらない。
まとめ
無垢材とは、
高級な材料でも、特別な材料でもない。
ただ、
木を、そのまま引き受ける素材
である、というだけだ。
向いている人もいれば、
向かない人もいる。
この記事の役割は、
選ばせることではない。
判断に必要な言葉を、
正しい位置に戻すこと
それだけである。
定義を知ったうえで、
それでもどう選ぶかは、
もう少し感覚的な話になる。
その話は、こちらで。
無垢家具の選び方と見分け方

